
職場でのコーチングや1on1セッションは、個人の能力開発をするうえでも、チームでのパフォーマンスを上げるためにも非常に重要です。しかし、メンバーによっては、セッションに対して抵抗を感じる人も少なくありません。
以前、私のいた職場で国際コーチング連盟のプロコーチ(すごいコーチング資格)を持っている上司からのコーチングセッションに嫌悪感を持っていて、1on1の時間が嫌いだと話していた人がいました。コーチングの実力とはまた別の部分で、コーチングの導入のスキルが必要そうです。
一度、抵抗感が生まれてしまうと、その後のセッションを有意義にすることは難しくなります。コーチの振る舞い一つでメンバーの成長の機会を奪ってしまうことになるのです。
せっかく、コーチングをするのだったら、抵抗感を持たれることは避けたいですよね。そこで今回は、コーチングに抵抗感をあまり感じないようにするためのコーチングや1on1セッションの導入の方法について紹介します。
解決策
最初に、信頼関係の構築をする
スクラムマスターに限らず、チームメンバーとの信頼関係を優先する。信頼関係の構築は、コーチングに対する抵抗を減らすため最も有効な方法とされています。信頼関係がコーチングの受け入れやすさに大きく影響します。
信頼関係を構築する方法は幅広く、このあとに紹介するものと被ってないものだけこちらで紹介するようにします。
信頼関係を築く具体的な方法はこちらです。
能力の証明
コーチング能力がある場合、それを示すことが信頼される1つの要因になります。コーチングしたことない人よりも、プロのコーチですと言われる方が信頼しやすいですよね。この人のセッションは良い時間になるに違いないと思えるかもしれません。
コーチングの資格がある人では、自分にはコーチングの資格があるからと少しおごりを持っていてうまくいかないケースもあるみたいです。そうならないためにも、コーチング資格は一つの加点要素くらいに考えておいてください。
「そんなこといっても、これからコーチングをするのが初めてで能力を示すことなんてできない」という方もいらっしゃることでしょう。能力の証明は1つの要素です。下記の他の要素で補っていきましょう。自分はまだコーチングのスキルが低いから人一倍がんばろうという心構えをしたり、それを伝えることも下記の「善意の表明」として効果があります。
どうしてもスキルがないことが気になるのであれば、こちらで紹介しているような練習会をを開催したり参加したりして、それを伝えることも効果的です。スキルがあるというのは必ずしも資格に限った話ではありません。「今期から毎月コーチングの練習会に参加している」と伝えれば、何も伝えないよりも、スキルがあると思ってもらえます。
善意の表明
クライアントの利益を重視していること、相手に寄り添うことが重要です。コーチングの手法にもありますが、相手の話していることを否定や価値判断せず受け入れることが大切です。相手に「あなたのためになるようなセッションにしたい」と話してしまうのも効果的です。言ったからにはやるというのが前提になってきますので、そこも含めて信頼関係の構築に役立ててください。
誠実さの維持
一貫した行動や価値観を示すことも重要です。約束したセッションの時間を守ったり、秘密保持としてセッションで聞いたことを他の人に話さない、話す場合には許可を取るなどが重要になります。コーチングセッションをしていると、上司や人事から内容がどうだったか聞かれるケースもあるかと思いますが、許可を取ってない話をすると、信頼関係が壊れてしまいますので気をつけましょう。
自己開示をする
職場でのコーチングであれば、パーソナルコーチングとは違って、ある程度は自己開示をしていっても構いません。どちらかというと、多くのスクラムマスターは、自分の話をしすぎる傾向にあるので、少しだけすると思ってもらうのがちょうどいいかもしれません。セッションをしているときに、自分にも似たような経験があるなどで、すこーしだけ話すのが良いでしょう。
相手の利益を優先的に考えて行動する
「最初に、信頼関係の構築をする」のところの「善意の表明」と似ているのですが、重要なので少し繰り返しがありますが紹介します。
スクラムマスターのコーチングで見受けられるのは、チームの成果が出るように無理をして導くがゆえに、個人の利益や考えを軽視していることです。これでは、メンバーによっては「チームの利益を優先して、自己犠牲の精神で業務に励め」と言われているように感じる人もいるでしょう。こう感じられてしまうと、コーチングのセッションがうまくいくはずがありません。
話しているうちに、個人の利益と、チームや組織の利益が異なる場合もあるはずです。そういった場合、相手個人の利益を優先して話をしたり、行動を支援することでコーチングに対する苦手意識は起こりづらくなります。
行動や価値観の押し付けをしない
スクラムマスターのコーチングを見ていると「言ったからにはやるんでしょ?」というスタンスでメンバーに行動を押し付けている人を見かけます。行動をサポートすることは重要ですが、これでは「言ったらやらないといけなくなるから言わないし、セッションを受けたくない」と思われても仕方ありません。
行動を強制されると感じられると、最悪の場合、本音で話してもらうことすらなくなってしまいます。そのため、相手の考えや行動を尊重し、そのうえで相手が変わりたいと思ったときにサポートしましょう。
行動を起こせないということは、行動することによって得られるコストパフォーマンスが悪いと感じている場合も多いです。行動のハードルが低いことや、価値観に大きく影響するようなことであれば、自然に行動に移したいと思うはずです。少し気長に待つ心構えが重要になってきます。
コーチングの説明をし時間の使い方の希望を聞く
コーチングを受けたことのない人は、どのような時間の使い方をして欲しいのか、どうやったら意義のある時間になるのか自分でもわからないものです。コーチングの特徴やメリットが分からないままに、時間の使い方の希望を聞くと、自分の楽しい時間の使い方を希望される場合もあります。たとえば、過去にあったのが「どんな時間にしましょうか?」と聞かれると、エンジニアだと「新しい技術について語り合う時間にしたい」と答えて、コーチが技術の話をする時間にしてしまった例です。
もちろん、コーチングセッションの時間を自分の希望通りに支えているので、メンバー側からは苦手意識が生まれないでしょう。しかし、それでは重要な成長に繋がらない場合もあります。いろんな例を聞いていると、1on1の時間はほとんど雑談の時間にしているというケースもありました。
そうならないためにも、相手に対してコーチングがどう役に立つのかを説明したり、コーチングのセッションを崩さない程度にどのような時間の使い方ができるのかをレクチャーしてから相手の希望を聞いてみるのがおすすめです。そして、セッションの終わりには、今日の過ごし方はどうだったか?のフィードバックをもらって、できるだけ不快感がなく有意義にできることを目指していることを伝えてみるのがよいでしょう。メンバーも自分のために時間の使い方をカスタマイズしてくれてると感じれば、良い時間にするために協力してくれやすくなります。
まとめ
今回は、スクラムマスターがコーチングや1on1セッション導入するときに、メンバーからの抵抗、コーチングアレルギーを減らすための方法を紹介しました。
スクラムマスターは、これらのポイントを意識しながら、メンバーとの信頼関係を築くことで、個々人の成長とチームの発展を支援していくことが期待できます。
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